遠見尾根(長野県大町市)H11.9.22
遠見尾根は長野県白馬村と大町市の境界線上にあり、境界上を尾根が一列に続いています。途中小遠見山(2007m)・大遠見山(2106m)山頂を通過した後、富山県との県境に到達した場所が北アルプスの尾根となり、そこから南に2km程で五龍岳(2814m)に到着します。

登山は未経験でしたが、体力には自信があり、風景写真のひとつとしてぜひ撮影してみたいと思っていたところ、職場で登山が趣味の先輩がいたので、先輩の指導で登山道具を一式揃え、私の希望で遠見尾根を登ることとなりました。遠見尾根は風景写真雑誌に紹介されており、ロープウェイで尾根近くまで登ったら後は稜線に沿って一本道を進むだけ、かつ左右の見晴らしがとても素晴らしいとの情報から選んだのでした。

実際その通りでしたが、やはりそこは登山、ロープウェイを降りて稜線に向かおうとした途端、荷物の重さに驚き、立ち上がることも苦労しました。スタートからヒーヒー言いながら登りましたが、稜線までたどり着けば素晴らしい風景が・・・と思ったら、一面白い雲に覆われていました。雲の上にいるだけで素晴らしいことなんですが、実はこの日は遠くから台風が迫っていて、長野も風が強く吹いていました。こちらには来ないだろうなんて軽く考えていたものの、雲の多い状態に一抹の不安がよぎりました。

稜線を進み、途中食事や水分補給をして荷物も軽くなったためか、順調に登っていました(正直険しさはあまりなかったです。両脇が崖になっているのが怖かったですが)が、夕方になって激しい雨に見舞われたため、広い場所でテントを張り、早めの休息を取りました。何しろ昨夜は大阪から徹夜で運転して寝ていなかったので、大雨の中夜明け前まで爆睡してしまいました。

夜明け前に起床したところ、雨が止み、分厚い雲が稜線を伝って移動する壮大な光景を目にし、慌てて撮影を始めました。知らない間に丁度見晴らしの良い場所に偶然テントを張っていたので、素晴らしい朝焼けを撮影することができました。これぞ登山の醍醐味だと感動しましたが、その後が大変でした。

今回道が一直線であったこともあり、地図を持参しておらず、山小屋までの距離が分からないまま上を進みました。天候はすぐに崩れていき、山小屋にたどり着いた時は霧と強風でひどい状態でした。そこで分かったことは「台風が長野に向かっている」ことでした。急いで下山すれば間に合うと山小屋の方に言われましたが、既に外はすごい風です。もう少しで五龍岳の山頂でしたが、山小屋に着いて5分後には下山を開始しました。

後は死にもの狂いで脇見も触れずに降りて行きました。途中強風で体ごと吹っ飛ばされたりしながら、実感ではものすごい短い時間で麓まで降りた気がしました。勿論帰りのロープウェイが動いているはずもなく、最後は転がるように斜面を降りて行きました。

その後は一度も登山に行くことはなく、購入した登山グッズは結局処分しました。逆にそれ以降登山に拍車がかかった先輩は、後に五龍岳山頂へ行ったのですが、実は山小屋から山頂までがとてつもなく恐ろしい悪路だったそうです。台風で大変な目に遭いましたが、無事帰宅できたということで運が良かったと思いました。恐らく登山はもうしないと思います。