毘沙門堂(京都市山科区)R5.3.26
毘沙門堂はJR山科駅から北に10分余り歩いた山中にあります。紅葉の名所として有名な寺院ですが、桜の開花情報の中に毘沙門堂も含まれていたことがきっかけで訪れました。

正式名称は「護法山安国院出雲寺」と言います。毘沙門堂の前身である出雲寺は、大宝3年(703年)文武天皇の勅願により開かれた天台宗の寺院です。建久6年(1195年)に、「平等寺・尊重寺・護法寺」という平家ゆかりの三つの寺院が統合して誕生した寺が出雲寺の寺籍を継ぎました。なお、出雲寺は、創建時から現在地に移転するまでの間、上京区にある相国寺の北、上御霊神社付近にあったとされています。

応仁の乱(1467年)により焼失し、文明元年(1469年)に再建されるも、元亀2年(1571年)に再び焼失しましたが、江戸幕府の力添えで現在の場所に寛文5年(1665年)に再建されました。その際毘沙門天を祀ることから、出雲寺は毘沙門堂と呼ばれるようになりました。以後、門跡寺院(皇族や貴族が住持を務める格式の高い寺院の称)となり、天台宗京都五門跡の一つ「毘沙門堂門跡」と称されるようになり、現在に至っています。

駅からなだらかな坂道を登り続けると、道の正面に山の斜面が立ちはだかり、毘沙門堂の入口の表示がされています。石段の脇の森には桜がチラホラ見えますが、背が高いものの細く、力強さは感じませんでした。期待せずに仁王門から本堂に入ると、本堂の左側とその横の勅使門脇に小さなシダレザクラが咲いていました。桜があって良かったと思ったのも束の間、更に左奥にある宸殿の目の前に、空間を全て埋め尽くすほどの大きなシダレザクラが現れ、予想以上の桜にビックリしました。

この桜は「般若桜」と呼ばれ、樹齢100年程と言われています。高さはそれほどでもありませんが、横一杯に花を付けて広がる姿は圧巻です。当日は小雨が降る生憎の天気だったからなのか、観光客が殆どおらず、とてもラッキーでした。また、付近の山には霧が立ち込めており、桜との組み合わせを狙うことができました。

他にもソメイヨシノやシダレザクラ、糸桜等50本の桜が植えられているとのことで、般若桜や本殿付近の桜の他、薬医門付近やすぐ横の駐車場付近にも大きな桜がありました。帰りは勅使門から本来の参道で下山しましたが、先ほど登りの参道で見た細い桜が、違う角度見てみると綺麗だったので撮影をしてみました。京都市街地からポツンと離れており、付近に名所がないのが欠点ですが、桜の時期には是非訪れていただいたいと思います。