弁天桜(福島県田村市)H28.4.17     
この桜は、民家もない林道の脇にある桜ですが、小さな看板を見つけるまでは桜があるとは想像しにくいような場所にあります。林道を進むと、ふと脇に小さな駐車場と弁天桜の看板が見えるので、車を止めて歩き出します。駐車場から下の地面に降りるための細い階段を下り、道というより道の跡という雰囲気の車が通れる程の広さの道を進みます。訪れた当時は朝から小雨が降っており、杉林に囲まれた薄暗く少しぬかるんだ道は撮影意欲を削いでいきましたが、桜の姿を見た瞬間、度肝を抜かれました。

桜のある空間のみ開けており、桜の下は芝生や水仙で綺麗にされていました。その桜の幹は苔むした太く貫禄のあるもので、横に広がりのある桜の枝ぶりも素晴らしいものでした。杉林に囲まれた薄暗い小雨の中で、ただ一人その空間にいたからなのか、それまでの桜にはない神がかった雰囲気を感じました。

桜の足元には祠があり、手前には桜の案内板もありました。案内板には「昔、嫁ぎ先から生家に帰ることを許されないことを思い悩み、この場所にあった池に身を投じた娘の供養のために親が桜を植えたのが、現在の弁天桜である」旨の説明書きがありました。とても桜があるような場所には見えなかったのですが、伝説とはいえ、そうだったのかと説得力がありました。

この弁天桜の樹齢は約400年、樹高10m、幹の太さ3.9m、幹の枝張り14.7mとのことです。案内板には見頃は4月下旬が多いとのことでしたが、温暖化のためか私が訪れた4月中旬には満開でした。例年は多くの人で賑わうそうですが、小雨が幸いして桜を独り占めできたのはとても幸運だったと思います。